物流業界の「2026年問題」とは|DX化がフォワーダーに与える影響

「物流の2026年問題」という言葉を目にする機会が増えている。

ただ、この言葉はいくつかの異なる文脈で使われており、何を指しているのかが混在しているケースが多い。トラック運転手の労働時間規制の話なのか、国際物流のデジタル化の話なのか、文脈によって意味が変わってくる。

この記事では、フォワーダー・通関業務の文脈に絞って、2026年前後に何が変わりつつあるのかを整理する。業界全体の変化を把握するための判断材料として使ってほしい。

「2026年問題」という言葉が指すもの

トラック運転手の時間外労働規制との混同を整理する

メディアで広く報道されている「物流の2024年問題」は、トラック運転手の時間外労働に上限が設けられたことによる輸送能力の低下を指している。これは国内物流・ラストマイル配送の問題であり、その影響が2025〜2026年にかけて本格化するという文脈で「2026年問題」と呼ばれることもある。

ただし、これはトラック輸送・国内物流の話だ。国際フォワーダー・通関業務を主な仕事とする人にとっては、直接的な影響よりも、荷主側の物流コスト上昇や輸送スケジュールの変化として間接的に影響が出る話になる。

フォワーダー・通関業務文脈での「2026年問題」とは何か

国際フォワーダー・通関業務の文脈で起きている変化は、労働時間規制よりも「デジタル化の加速」と「プラットフォーム化の進行」だ。

具体的には以下のような変化が、2025〜2026年にかけて加速している。

  • 税関システム(NACCS)の更新と電子申告の高度化
  • 荷主側のデジタル対応要求の増加(EDI・APIでのデータ連携)
  • デジタルフォワーダーの台頭による定型案件の取り込み
  • 大手フォワーダーによるシステム投資の加速

「2026年問題」という一言でまとめるより、「デジタル化の波が本格的に現場に届く時期」として捉える方が、実態に近いと思う。

なお、物流業界の法的な枠組みとして押さえておきたいのが「物流効率化法」だ。

物流効率化法の正式名称と施行スケジュール

2024年5月15日に公布された改正法により、従来の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」は、「物資の流通の効率化に関する法律」(物流効率化法)へと名称が変更された(令和6年法律第23号)。

施行は2段階で行われている。

  • 第1段階(2025年4月1日施行)
    全ての荷主・物流事業者に対し、物流効率化のための措置を講ずる努力義務が課される。荷待ち時間の短縮、積載効率の向上等が対象
  • 第2段階(2026年4月施行予定)
    一定規模以上の「特定事業者」(取扱貨物重量9万トン以上の荷主等)に対し、中長期計画の作成・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任等が義務付けられる

この法律はトラック輸送・国内物流が主な対象だが、荷主のサプライチェーン全体の効率化要求が高まることで、国際フォワーダーへの影響も間接的に広がっている。
荷主が物流効率化計画を作成する中で、フォワーダーへのデジタル対応要求・輸送コスト削減圧力が強まるという形で、現場への波及が起きている。

国際物流のデジタル化が加速している背景

税関のAEO制度・NACCSの更新

日本の税関手続きは、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を中心に電子化が進んでいる。NACCSは定期的にバージョンアップが行われており、対応できる手続きの範囲が広がっている。

AEO(認定事業者)制度も、コンプライアンスが高い企業に対して通関手続きの簡素化・迅速化を認める仕組みとして機能している。AEO認定を持つフォワーダー・荷主は、申告から許可までの時間が短縮され、書類確認の一部が省略される。

これらの変化は、「正しくシステムを使いこなせる人材」の価値を上げる一方で、「手作業・経験則で回してきた人材」の相対的な価値を下げる方向に作用している。

グローバルプレイヤーのデジタル対応状況

DHL・FedEx・Maersk・Kuehne+Nagelといった大手外資系フォワーダーは、デジタルプラットフォームへの投資を加速させている。荷主がオンラインで見積もり・予約・書類管理・追跡をできる仕組みを、すでに実用レベルで提供しているプレイヤーも多い。

これらのプレイヤーと競合する国内中小フォワーダーにとっては、デジタル対応の遅れが競争力の低下に直結しつつある状況だ。

フォワーダーの業務で変化が起きていること

書類処理・HS分類の自動化進行

インボイス・パッキングリストのデータ取り込み、HS分類の候補提示、申告書の初稿自動生成——これらの業務において、AIを活用したツールの導入が大手フォワーダーを中心に進んでいる。

現時点では「担当者の確認工数を減らす」段階にとどまっているが、精度が上がるにつれて、単純な書類処理業務に関与する人員の需要は減っていく方向にある。

AIがフォワーダーの業務全体に与える影響については、以下の記事で詳しく整理している。
AIはフォワーダーの仕事を奪うのか|2026年の現在地を整理する

顧客(荷主)からのデジタル対応要求の増加

荷主側の物流担当者も、デジタル化への対応を求められるようになっている。「ExcelでなくAPIでデータ連携したい」「輸送状況をリアルタイムで自社システムに取り込みたい」といった要求が、大手荷主を中心に増えている。

こうした要求に対応できないフォワーダーは、荷主の選定から外れるリスクがある。対応できるかどうかが、荷主との契約継続に影響し始めている。

一方で、中小フォワーダーの現場では、こうした荷主の要求に応えるシステム投資が難しいケースも多い。デジタル化への対応力が、フォワーダー間の格差を広げる要因になりつつある。

通関業界にいたころ、大手荷主の担当者から「EDI対応していないと今後は発注先から外す方向になる」と言われたことがある。当時は先の話に感じたが、2026年現在はそれが現実になっている職場が増えている。

変化に対応している企業・していない企業の違い

デジタル化への対応状況は、企業規模と経営方針によって大きく異なる。

対応が進んでいる傾向がある企業

  • 外資系フォワーダー(本社主導でグローバル統一システムを導入)
  • 国内大手フォワーダー(IT投資予算がある・専門部署がある)
  • デジタルフォワーダー(そもそもシステムがビジネスの中心)

対応が遅れがちな傾向がある企業

  • 独立系中小フォワーダー(IT投資の余力が少ない)
  • 特定荷主・特定ルートに依存している企業(変化する動機が少ない)
  • 経営層のデジタルリテラシーが低い企業

自分が働いている会社がどちらの傾向にあるかは、日常業務の中でも感じているものがあると思う。その感覚は、キャリアを考える上での判断材料のひとつになる。

個人としてどう準備するかの判断材料

デジタル化の波に対して、個人としてどう動くかは、年齢・職種・現在の会社の状況によって変わる。ここでは結論を出さない。ただ、以下の問いを自分に投げかけてみることは、判断の整理に役立つと思う。

  • 自分の業務の中で、デジタル化によって変わりそうな部分はどこか
  • 今の会社は、デジタル化に対応できる体力・意志があるか
  • 自分のスキルセットは、変化後の業務でも価値を持つか

この問いに向き合うことを避けていると、気づかないうちに判断のタイミングを逃す。「危機感はあるが何もしない」状態と「意識的に待機している」状態の違いについては、以下の記事で整理している。
判断を外部に預け続けたときに起きるずれ

また、デジタル化への対応として英語力やITリテラシーを強化するという方向を検討している場合、以下が選択肢のひとつになる。

よくある質問

フォワーダーはデジタル化でなくなる仕事か

「フォワーダーという職種がなくなる」という話と、「フォワーダーの業務の一部がデジタル化で変わる」という話は、分けて考える必要がある。定型的な書類処理・情報転記の業務は自動化が進む方向にあるが、荷主との関係構築・例外対応・規制変更への対応といった業務は、当面人が担い続ける領域だ。「職種がなくなる」より「業務が再配分される」という表現の方が現状に近い。

2026年以降の通関業務はどう変わるか

NACCSの高度化・AI補助ツールの普及により、申告書作成の効率化は進む方向にある。ただし、通関申告の最終的な責任を通関士が負うという法的な構造は変わらないため、「通関士が不要になる」という状況には当面ならない。変わるのは、通関士が担う業務の中身——単純作業が減り、判断・確認・例外対応の比重が上がる方向だ。

デジタル化に対応するために、今から何をすればいいか

会社・年齢・職種によって答えが変わるため、一般論としての「これをやればいい」は出しにくい。ただ、最低限として「NACCSの操作に慣れておくこと」「荷主のデジタル要求(API・EDI)の基本を理解しておくこと」「英語でのシステム操作・マニュアル読解ができること」あたりは、汎用性が高いスキルとして挙げられる。

関連する情報

AIとフォワーダーの仕事の関係を、より広い視点で整理した記事はこちら。
AIはフォワーダーの仕事を奪うのか|2026年の現在地を整理する

デジタル化の波の中でキャリアをどう考えるかについては、以下も参考になると思う。
何もしない状態に含まれる二つの構造

タイトルとURLをコピーしました