通関士試験の対策を始めようとしたとき、「どの講座を選べばいいか」という問いに直面する。
ユーキャン、TAC、LEC、スタディング、フォーサイト——選択肢は複数あり、価格も学習スタイルも異なる。「一番合格率が高い講座はどこか」という問いの立て方は、実はあまり意味がない。講座の合格実績は公表方法が各社で異なり、単純比較できないからだ。
この記事では、「どの講座が一番いいか」の結論は出さない。フォワーダーとして働きながら受験を目指す人が、自分の状況に合った選択をするための判断材料として整理する。
試験の難易度・出題範囲・合格率については、以下の記事で詳しく整理している。
→ 通関士試験の難易度と勉強法|合格までの現実的な道筋を整理した
この記事の前提——「どの講座が一番いいか」は人によって変わる
通関士講座を選ぶ上で、まず確認しておきたいのは「自分の制約条件」だ。講座そのものの質だけでなく、自分の生活・仕事のリズムに合っているかどうかが、合格の可否に大きく影響する。
フォワーダーとして働きながら通関士試験に挑む場合、最大のハードルは「学習時間の確保」だ。繁忙期の残業・突発対応・不規則な勤務——これらが学習の継続を阻む。どんなに良い講座でも、学習を続けられなければ合格には近づかない。
通関業界にいた同僚が「繁忙期に入る前の9月に追い込みをかけて、繁忙期は維持だけにした」という戦略で合格していた。試験スケジュールと業務の繁忙期の重なりを最初から把握しておくことが、計画の現実性を上げると思う。
講座を選ぶ前に確認する3つの変数
変数①:学習時間——週に何時間確保できるか
通関士試験の合格に必要な学習時間の目安は、実務経験がある人で200〜400時間程度だ。週に確保できる学習時間によって、合格までの期間が変わる。
- 週10時間確保できる→20〜40週(5〜10ヶ月)
- 週5時間確保できる→40〜80週(10〜20ヶ月)
- 週3時間以下→2年以上の計画が現実的
繁忙期に学習時間がゼロになることを織り込んだ上で、年間の学習計画を立てることが重要だ。試験は毎年10月に行われるため、逆算して「いつから始めるか」を決めておくといい。
変数②:実務経験の有無——どの科目が得意か苦手か
フォワーダー・通関業務の実務経験がある場合、第3科目(通関書類の作成・申告書作成)で業務経験が活きやすい。一方、第1科目(関税法等)の法律の条文レベルの知識は、実務で「なんとなく」使ってきた知識を試験レベルに引き上げる作業が必要だ。
自分がどの科目を得意・苦手とするかを先に把握しておくことで、補強が必要な部分に特化した講座選びができる。
変数③:予算——費用対効果をどう考えるか
通関士講座の価格帯は以下の通りだ。
- 通信講座(スタディング・フォーサイト等):3〜6万円程度
- 通信講座(ユーキャン等):6〜9万円程度
- 通学・ハイブリッド(TAC・LEC等):15〜30万円程度
- 独学:テキスト・過去問代のみ(1〜3万円程度)
費用が高いほど合格しやすいという単純な関係ではない。自分の学習スタイルに合った形式で、継続できる価格帯を選ぶことが重要だ。
通関士講座の主な選択肢と特徴
【通信講座タイプ】スキマ時間重視の人向け
スマホ・タブレットで学習できる通信講座は、通勤時間・昼休み・移動中といったスキマ時間を活用しやすい。フォワーダーとして働きながら学習を続けるには、最も現実的な選択肢のひとつだ。
スタディング(通関士講座)
- 価格帯:3〜4万円程度(最もリーズナブルな選択肢のひとつ)
- 特徴:スマホで完結する学習設計。動画講義・問題演習・テキストをアプリで一元管理
- 向いている人:コストを抑えたい・通勤時間に学習したい・自分でペースを管理できる
- 注意点:添削サービスがないため、第3科目(申告書作成)の記述問題対策は別途必要
フォーサイト(通関士講座)
- 価格帯:4〜6万円程度
- 特徴:フルカラーテキストと動画講義の組み合わせ。合格点主義の学習設計(満点を目指さない)
- 向いている人:テキストの読みやすさを重視する・視覚的な教材で学びたい
- 注意点:スタディング同様、第3科目の添削は含まれない場合がある
ユーキャン(通関士講座)
- 価格帯:6〜9万円程度
- 特徴:通信教育の老舗。紙テキスト中心で、添削サービスが充実している
- 向いている人:紙のテキストで学びたい・添削フィードバックを重視する
- 注意点:スマホ完結型と比べてかさばる。移動中の学習には向かない面がある
【通学・ハイブリッドタイプ】理解の深さ・仲間との学習重視の人向け
通学型またはオンラインライブ授業で学べる講座は、講師に直接質問できる・他の受講者と切磋琢磨できるという強みがある。価格は高いが、理解の深さと合格率の安定性では通信講座より優れているケースが多い。
TAC(通関士講座)
- 価格帯:15〜25万円程度
- 特徴:業界最大手の資格予備校。通関士試験の出題傾向分析に強く、毎年多くの合格者を輩出している。通学・Web通信・ハイブリッドから選択できる
- 向いている人:確実に合格したい・講師に質問しながら学びたい・費用よりも合格を優先する
- 注意点:費用が高い。通学の場合、定期的に校舎に行く時間が必要
LEC東京リーガルマインド(通関士講座)
- 価格帯:15〜25万円程度
- 特徴:法律系資格に強い予備校。通関業法・関税法の法律的な解説が丁寧。第3科目(通関実務)の攻略に定評がある
- 向いている人:法律科目が苦手で丁寧な解説が必要・第3科目を特に強化したい
- 注意点:TACと同様、費用が高め
【独学】コスト最優先の人向け
市販のテキストと過去問だけで合格を目指す独学は、費用を最も抑えられる方法だ。フォワーダー・通関業務の実務経験がある場合、独学でも対応できる範囲が広い。
独学のメリット
- 費用が1〜3万円程度と最安
- 自分のペースで進められる
- 実務経験がある人は、業務の延長として理解しやすい科目が多い
独学のデメリット・現実的な課題
- 出題傾向・重要ポイントを自分で把握する必要があり、効率が下がりやすい
- 第3科目(申告書作成)は記述問題のため、独学では添削・フィードバックが得られない
- 法改正への対応が遅れやすい(最新テキストの選定が重要)
- モチベーション維持が難しい
独学で第3科目だけ添削サービスを使うという組み合わせが、費用を抑えながら弱点をカバーする現実的な方法のひとつだ。
フォワーダーとして働きながら合格した人の学習パターン
パターンA:通勤・昼休みのスキマ時間活用型
片道30分の電車通勤であれば、往復で1日1時間の学習時間になる。昼休み30分を加えると、1日1.5時間。週5日で7.5時間——これを継続するだけで、半年で200時間に達する。
スマホで完結する通信講座(スタディング等)は、このパターンに最も向いている。動画を「倍速で聴く」習慣をつけることで、インプット効率を上げやすい。
パターンB:繁忙期を避けた集中学習型
年末・春節前後の繁忙期は学習をほぼ諦め、繁忙期前(8〜9月)と繁忙期後(3〜5月)に集中して学習するパターンだ。
繁忙期に合わせた学習計画を最初から組み込んでおくことで、「計画通りにいかない」という挫折感を防ぎやすい。繁忙期は「維持(知識を忘れないための最低限の復習)」と割り切り、繁忙期明けに集中するという発想の転換が有効だ。
パターンC:第3科目(申告書作成)だけ添削サービスを使う型
第1・2科目は独学または安価な通信講座で対応し、最も得点に直結する第3科目の申告書作成だけ、添削サービスがある講座(ユーキャン・TAC等)を使うという組み合わせだ。
第3科目は記述問題のため、「合っているかどうか」を自分で判断しにくい。専門家からのフィードバックが合格精度を上げる上で特に有効な科目だ。
講座選びの判断フレームワーク
以下の問いに答えることで、自分に合った選択肢が絞り込みやすくなる。
① 週に安定して確保できる学習時間は?
5時間以上→通信講座・独学のどちらでも対応可能
3〜5時間→スキマ時間活用型の通信講座が現実的
3時間以下→1年での合格は難しい。2年計画を前提に考える
② 費用の上限は?
3万円以下→独学またはスタディング
3〜8万円→スタディング・フォーサイト・ユーキャン
8万円以上→TAC・LEC等の本格的な講座も選択肢に入る
③ 第3科目(申告書作成)に不安があるか?
ある→添削サービスがある講座(ユーキャン・TAC・LEC)を優先
ない(実務経験が豊富)→通信講座・独学でも対応できる可能性が高い
④ 自分でモチベーションを維持できるか?
できる→通信講座・独学
不安がある→通学型・ハイブリッド型で仲間・講師との接点を持つ
各講座への申込みリンク
以下に、通関士試験対策講座をタイプ別に挙げておく。まず資料請求・無料体験から始めることで、実際の学習のしやすさを確認してから判断できる。
スキマ時間活用型(スマホ完結)
テキスト充実型(添削あり)
本格対策型(通学・ハイブリッド)
よくある質問
通関士講座は何ヶ月前から始めればいいか
試験は毎年10月に実施される。週5時間の学習時間が確保できる場合、200〜300時間を目標にすると、前年の10月〜当年の4月頃(半年〜1年前)から始めることが現実的だ。繁忙期を挟む場合は、その分を織り込んで早めに始める方がいい。「今年の試験に間に合わせたい」という場合、残り時間と確保できる学習時間から逆算して現実的かどうかを先に確認することを勧める。
実務経験があれば独学でも合格できるか
可能なケースはある。フォワーダー・通関担当として実務経験がある場合、第3科目(通関書類の作成)で業務経験が活きるため、独学でも対応できる範囲が広い。ただし、第3科目の記述問題は添削フィードバックなしでは弱点の把握が難しいため、独学の場合でもこの科目だけは添削サービスを活用することが合格精度を上げやすい。
通信講座と通学、どちらが合格しやすいか
単純に「どちらが合格しやすいか」という比較は難しい。通学型は理解の深さと質問できる環境の面で優れているが、定期的に校舎に行く時間が取れない人には続かない。通信講座はスキマ時間を活用しやすいが、モチベーション維持と第3科目の添削対応が課題になりやすい。「自分の生活スタイルに合って継続できるか」を軸に選ぶことが、実際の合格率を上げる上で重要だ。
一発合格を目指すべきか、2年計画にすべきか
週に5時間以上の学習時間を安定して確保できる環境があれば、一発合格を目指すことは現実的だ。週3時間以下しか確保できない場合は、2年計画を前提に「1年目は第1・2科目の合格ラインを安定させる、2年目に第3科目を完成させる」という目標設定の方が、無理のない取り組みになる。ただし、科目合格制度がないため、2年目もすべての科目を受験する必要がある。
合格後のキャリアへの活かし方
通関士試験に合格した後、その資格をキャリアにどう活かすかは、取得後の行動によって変わる。転職での活用・副業への応用・現職での昇格・役割変更など、複数の方向性がある。
通関士資格がキャリアに与える影響については、以下の記事で整理している。
→ 通関士資格はキャリアに活きるか|取得・活用・限界を整理した
通関士資格を活かした副業の選択肢については、以下を参照してほしい。
→ 通関士ができる副業5選|資格を活かした現実的な選択肢を整理した

