デジタルフォワーダーとは何か|従来型との違いと今後を整理した

「デジタルフォワーダー」という言葉を耳にする機会が増えている。

FlexportやFreightosといった企業名が出てくることもあるが、「実際に何が違うのか」「日本の市場にどう影響するのか」が具体的にわかりにくいという人は多いと思う。

この記事では、デジタルフォワーダーの仕組み・従来型フォワーダーとの違い・日本市場への影響・フォワーダーとして働く人への示唆を整理する。「デジタルフォワーダーに仕事を奪われる」という話でも「大丈夫」という話でもなく、現状を把握するための判断材料として使ってほしい。

デジタルフォワーダーとは何か

定義と基本的な仕組み

デジタルフォワーダーとは、従来のフォワーダーが電話・メール・FAXで処理していた輸送手配・書類管理・追跡・見積もりといった業務を、デジタルプラットフォーム上で自動化・効率化したフォワーダーのことだ。

荷主はプラットフォームにアクセスし、以下のことをオンラインで完結できる。

  • 輸送ルート・コストのリアルタイム見積もり
  • スペースの予約・ブッキング
  • 書類のアップロード・管理
  • 貨物のリアルタイム追跡
  • インボイス・支払いの管理

これらの業務は、従来のフォワーダーでは担当者が手作業・電話・メールでこなしていた部分だ。デジタルフォワーダーはこのプロセスをシステム化することで、処理速度の向上・コスト削減・透明性の確保を実現している。

デジタルフォワーダーと従来型フォワーダーの構造的な違い

デジタルフォワーダーと従来型フォワーダーの違いは、「デジタルツールを使っているかどうか」だけではない。ビジネスモデルの構造から異なる。

比較軸 従来型フォワーダー デジタルフォワーダー
顧客接点 担当者が電話・メールで対応 プラットフォーム上でセルフサービス
見積もり 担当者が手動で作成・送付 リアルタイム自動生成
書類管理 メール添付・FAX中心 プラットフォーム上で一元管理
追跡 担当者への問い合わせが必要 リアルタイムでオンライン確認
得意な案件 複雑・特殊・大口案件 定型・シンプル・小口案件
強み 関係性・柔軟性・例外対応 スピード・コスト・透明性

主要なデジタルフォワーダーの現状

Flexport(フレックスポート)

米国発のFlexportは、デジタルフォワーダーの代表的な存在だ。2013年の創業以来、テクノロジーを活用した貨物フォワーディングのプラットフォームとして急成長した。

荷主はFlexportのプラットフォームを通じて、海上・航空の輸送手配・通関・配送をワンストップで管理できる。特に、サプライチェーン全体の可視化(どこに貨物があるか・どのコストがかかっているか)をリアルタイムで把握できる点が、大手荷主から支持を得ている。

ただし、Flexportも「すべての案件をデジタルで完結」しているわけではない。複雑な案件・特殊貨物・規制対応が必要な案件では、人による対応が入る構造になっている。

Freightos(フレイトス)

イスラエル発のFreightosは、フォワーダー向けの運賃管理・見積もりプラットフォームとして始まり、現在は荷主が直接フォワーダーに見積もりを依頼できるマーケットプレイスとしても機能している。

複数のフォワーダーの見積もりをオンラインで比較できる仕組みは、荷主にとっての透明性・比較しやすさを高める一方、フォワーダー間の価格競争を加速させる側面もある。

日本国内のデジタル化の現状

日本国内のフォワーダー業界では、欧米と比べてデジタルフォワーダーの台頭は限定的な段階にある。その理由として以下が挙げられる。

  • 日本の荷主(特に中小企業)は、担当者との対面・電話での関係性を重視する傾向が強い
  • NACCSを中心とした既存の電子通関システムが普及しており、新規プラットフォームへの移行コストが高い
  • 日本語対応・日本の規制への対応が必要で、海外のデジタルフォワーダーの参入障壁がある

ただし、大手外資系フォワーダー(DHL・Maersk・Kuehne+Nagel等)は、デジタルプラットフォームの日本展開を進めており、大手荷主を中心に利用が広がりつつある。

通関業界にいたとき、Flexportの名前を荷主担当者から聞いたのは2022年頃だった。「使ってみたが、複雑な案件になると結局人に聞かなければならなかった」という話だった。デジタル化の波は来ているが、現場での普及には時間差がある。

デジタルフォワーダーが「奪える」案件と「奪えない」案件

デジタルフォワーダーが取り込みやすい案件

デジタルフォワーダーが競争力を持ちやすいのは、以下のような案件だ。

  • 定型的な輸送(同一荷主・同一ルート・繰り返し案件)
  • シンプルな品目の小口輸送
  • コスト比較・透明性を重視する荷主の案件
  • デジタルネイティブな企業(スタートアップ・EC企業)の案件

デジタルフォワーダーが取り込みにくい案件

一方で、以下のような案件ではデジタルフォワーダーには対応しにくい部分が残っている。

  • 特殊貨物(危険品・温度管理品・超大型貨物)の輸送
  • 輸出規制・経済制裁・原産地規則が複雑に絡む案件
  • トラブル発生時の例外対応・緊急対応
  • 荷主との長期的な関係性・信頼をベースにした案件
  • 中小荷主の輸出入初心者サポート(手取り足取りが必要な場面)

「デジタルフォワーダーに仕事を奪われる」という話は、上の「取り込みやすい案件」の部分では現実的だ。ただし、「フォワーダーという職種がなくなる」という話は、現時点では実態と乖離している。

従来型フォワーダーとして働く人への示唆

デジタルフォワーダーの台頭をキャリアにどう活かすか

デジタルフォワーダーの台頭は、従来型フォワーダーにとってリスクだけではなく、機会でもある。

デジタルプラットフォームを使いこなせるフォワーダーは、荷主に対して「デジタルと人の両方の対応ができる」という価値を提供できる。特に、大手荷主がデジタルプラットフォームへの移行を進める中で、その移行を支援できるフォワーダーへの需要が生まれつつある。

また、デジタルフォワーダーへの転職・デジタルフォワーダーを提供する企業のカスタマーサクセス職という選択肢も、フォワーダー経験者にとってのキャリアの選択肢として存在する。

自分の担当案件の「デジタル代替リスク」を把握する

自分が現在担当している案件が、デジタルフォワーダーに代替されやすいかどうかを把握しておくことが、キャリアの判断材料になる。

定型案件・小口案件が中心の業務は、代替リスクが高い。特殊案件・複雑な案件・荷主との深い関係性が必要な案件は、代替リスクが低い。自分の業務ポートフォリオを確認しておくことが、変化への備えの第一歩になる。

AIとデジタル化がフォワーダーの仕事全体に与える影響については、以下のページで整理している。
AIはフォワーダーの仕事をどう変えるか|物流デジタル化の全体像を整理した

よくある質問

デジタルフォワーダーは日本で普及しているか

欧米と比べると普及は限定的な段階だ。大手外資系フォワーダーのデジタルプラットフォームは大手荷主を中心に利用が広がっているが、中小フォワーダーや中小荷主への浸透はまだ限定的だ。ただし、大手荷主のデジタル対応要求が高まっていることで、国内フォワーダーへの波及が加速している状況にある。

Flexportは日本でも使えるか

日本市場でもサービスを提供しているが、主に外資系荷主・グローバルに展開している大手企業が対象になっている。中小企業・日本語対応・日本特有の規制対応という面では、まだ課題がある状況だ。

デジタルフォワーダーに転職することは可能か

可能だ。デジタルフォワーダーや物流テック企業では、現場経験を持つフォワーダー・通関士をカスタマーサクセス・オペレーション・プロダクト開発の文脈で採用するケースがある。「現場を知っている人間」としての価値が機能しやすい転職先のひとつだ。

デジタルフォワーダーと従来型フォワーダー、荷主はどちらを選ぶか

案件の性質と荷主のニーズによって変わる。スピード・コスト・透明性を重視するデジタルネイティブな企業はデジタルフォワーダーを選びやすい。一方、複雑な輸送・特殊貨物・担当者との関係性を重視する荷主は、従来型フォワーダーを選び続けるケースが多い。「どちらか一方がなくなる」より、「案件の性質によって使い分けが進む」方が実態に近い。

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